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コンタクトレンズ ピッカピカの1年生

「真澄様、折角のオフにお呼びだてして、申し訳ありませんでした。」
水城が決裁済みの書類を片手に真澄に詫びる。今日という日が真澄にとって、どれ程待ち続けた日かを知っているだけに、完全なるオフを取らせてやりたかったが、仕事は容赦なく真澄を襲ってきたのだ。真澄は朝一から出社し、最優先の決裁が必要だという案件を対応した。
「構わないよ。第一これは君のせいじゃない、不可抗力だ。君は秘書としてベストを尽くしてくれている。感謝しているよ。」
今までも、真澄は幾度かその素顔を水城には見せてきたが、最近はそこに人としての優しさが加わった。いや、それを素直に表現できるようになったという方が正しい。速水真澄という男、元々は優しい人柄なのだと水城はもうずっと前から知っていた。優しかったが故に、鋼鉄の鎧でその心を固めなければ生きてこれなかったのだ。あの非情な速水英介の養子として。そしてそんな真澄を変えたのが、他の誰でもなく真澄が心から愛する北島マヤだということも、誰が知らずとも水城だけは理解していた。
「さあ、真澄様、マヤさんがお待ちかねだと思いますので早くお出かけ下さいませ。」
水城は、クローゼットから真澄のコートと革の手袋を出して渡した。
「ああ、ありがとう、あとは頼んだよ。」
真澄もようやく仕事から解放されたことと、これからマヤに逢えるという高揚感で、いつになくそわそわしている。
「真澄様、そんなに慌てなくても。でも・・・マヤさんとの初めてのデートですもの、仕方ありませんわね。」
微笑ましい真澄の様子を見て、水城も笑う。マヤとのすれ違いも誤解もすべてが片付き、晴れてやっと思いを通じ合わせた二人だ。まだ公に交際宣言などはしていないが、もう誰憚ることなく付き合える立場になった。そうなって初めての二人のプライベートのオフ。そして、初のデート。二人だけでの芝居鑑賞や会食などは過去にも経験している彼らだが、やはりそれとは別物なのだろう。真澄の様子がそれを雄弁に語っていた。
「では、俺はこれで失礼する。」
「いってらっしゃいませ。」
颯爽とコートの裾を翻して、真澄が部屋を出て行くのを水城は微笑んで見送った。
真澄は会社を出て、そのまま丸の内方向に歩き出し、マヤに電話をかける。
ーマヤ?
ー今、会社を出たところだ・・・。
ー今、どこにいる?
ーわかった、五分で着くよ。
スマホをコートのポケットにしまうと、真澄は足早にマヤの待つカフェに向かった。
待ち合わせのカフェに到着すると店の中から、二人連れの女性客が出てきた。
「ね、奥の席に、女優の北島マヤいたよね?もっと地味な子かと思ってたけど、綺麗な人だね。」
「うん、見た見た。テレビで見るより、ずっと小さくて、可愛いね。」
すれ違いざまに聞こえてきた、マヤの話題。真澄の神経が一瞬研ぎ澄まされた。
「同僚の男の子たちが、最近騒いでたわ・・・」
だが、彼女達を引き留めるわけにも、ついて行くわけにもいかず、やがて彼女達の声は消え去った。真澄は気を取り直して店の中に入り、マヤを探す。先ほどの彼女達の会話では、マヤは店の奥にいそうだ。真澄はざっとあたりを見回すと、すぐに真澄の視線はマヤを捉えた。改めてこうして、外の風景の中にいるマヤを見れば、昔と違って随分と華やかになったと思う。自然と人目を惹く何かを漂わせているのだ。そして何人かの客がマヤの存在を気にしているようだった。そんなマヤを離れた所から暫し見つめていると、今度はマヤが真澄の存在に気づいた。ニコッと笑って小さく手を振る姿は、可憐な菫の花のような可愛さだ。マヤの仕草に、周囲の意識がマヤの視線の先にある真澄を捉える。180センチを越えるモデル並みのスタイルに、目鼻立ちの整った白皙。それに加えて滲み出る大都の後継者としての風格が、マヤ以上に目立つ存在となって周囲の視線を集めることになった。だが、真澄自身の目にはもうマヤしか映ってはいない。周囲の反応など、彼にはもうどうでもよくなっていた。
ゆっくりと真澄がテーブルにやってくるのをマヤはじっと見つめていた。柔らかなベージュ色のトレンチコートにブラウンの革のグローブ。前を閉めていないコートから覗くのは、トラッドな茶とベージュのグレンチェックのスリーピースだった。仕立ての良い白のワイシャツの襟元は、きっちりとノットが整えられた臙脂色のmonogram柄のネクタイとゴールドのカラーピン。足元は飴色のストレートチップのレースアップ。そして時計は、Breguetの「Classique 5178」。男性ファッション雑誌から飛び出たかのような出で立ちで、寸分の狂いも隙もない。
マヤは今更ながら恋人になった男の完璧さに息をのむ。これでメタルフレームの眼鏡でも装着されたら卒倒するなと内心思いながら、ぼーっと真澄を見上げていた。
「待たせたな。」
穏やかに微笑んで、真澄がマヤに声をかける。グローブを外し、コートを脱いで隣の椅子に置くと、マヤの正面に座る。脚を組む様も優雅だった。
「どうした?ぼーっとして。熱でもあるんじゃないのか?」
心配げに真澄がテーブル越しに手を伸ばして、マヤの頬に触れる。シャツの袖から覗く、ブレゲを纏った手首がマヤの視野に入ってきて、男の艶を感じさせた。途端にマヤの頬が薄紅色に染まる。
「は、速水さん・・・」
マヤが照れているのはわかったが、真澄はまるで御構いなしだ。むしろそんなマヤを楽しんでるようにさえ見える。
「照れることないだろ・・・」
留学経験もあり、海外との要人とも付き合いのある真澄には日本人特有のシャイさはなく、欧米紳士然とした振る舞いを極当たり前にする。レディファーストなど今更言うまでもない。
そしてその後しばらくは、久しぶりの逢瀬にありがちな、互いの近況を伝え合う。そして、運ばれてきたコーヒーを飲みながら、真澄がマヤにどこか行きたいところはないかと尋ねた。
「速水さんに特に予定がなければ、これを観にいきたいの。」
マヤが目の前に出したのは、歌舞伎座の十二月大歌舞伎のチケットだった。真澄は胸ポケットから徐に眼鏡を取り出してかけ、受け取ったチケットを確認する。マヤはその真澄の何気ない仕草に、胸をときめかせる。最近、近視が進んでいると眼鏡をかけるようになった彼だが、コンタクトレンズを勧められても、敢えて眼鏡にしたらしいと、マヤは水城から聞かされていた。だがその理由が、マヤがどこかで『私眼鏡フェチなの〜』と誰かに口走ったのを真澄が人伝に聞いた事に起因しているなどとは、夢にも思わないマヤであった。
「昼の部だな。こんな席、よく直前で手配できた
。」
「成駒屋さんが招待してくださったの・・・」
「ああ、神屋町の。彼の方はマヤを本当に可愛がってくださるな。」
「で、大丈夫?」
「ああ、問題ない。歌舞伎座ならここからタクシーですぐだし、時間も充分に間に合うだろう。」
そのまま真澄はチケットをスーツの内ポケットに仕舞う。そして彼の長い指先が、眼鏡のブリッジを押し上げる。その全ての仕草にマヤは見惚れていた。真澄はわざと格好をつけて、自分に見せつけているのではないかと思うくらい、なにもかもがマヤの心に響いて仕方がない。思わずマヤは火照ったような頬を、両手で押さえる。
「マヤ・・・本当に大丈夫か?」
真澄が再び、マヤを気遣う。だがマヤは、恥ずかしくて本当の事なんて言えない。目の前の貴方が格好良過ぎて、ドキドキしてますなんて。
「だ、大丈夫だから・・・。」
そんなマヤの内心をまるで見透かしたように、真澄が直球を投げて来た。
「・・・惚れ直したか?マヤ、好きだろ・・・俺の眼鏡姿。」
その勝ち誇った顔がまた、憎いほどに様になっていた。〜やられた・・・〜マヤはもはや白旗を上げるしかなかった。だからマヤは素直に小さく頷いた・・・そしてその瞳は心なしか潤んでいた。
一方、真澄もそんなマヤの仕草が可愛くて仕方なく、彼女の一挙手一投足から目を離せない。〜マヤ・・・その眼は反則だ・・・〜自分が贈ったネイビーのワンピースを上品に着こなし、派手さはないが、見る者が見れば一目でそのクオリティがわかるダイヤのイヤリングとペンダントも周囲の女性達とは明らかに一線を画していた。長い時間をかけて彼女を磨いてきたという自負が真澄にはあったが、洗練された彼女を見てるだけで、胸が高鳴る。歳上の男のメンツにかけて、余裕のある振りをしてはいるが、内心はマヤと然程に変わりはしなかった。マヤとこうしていられることがただ嬉しくて、浮き足立っている自分がいる。けれどそれが嫌じゃないから始末に負えないのだ。
しばらくは二人でお茶を飲み、今日の予定を話し合う。初めてのデートといっても、これといって何をするとは決めていなかった。
とにかく、気兼ねなく二人で過ごせればそれで良いと思っていた。二人で普通に街を歩く・・・今までのすれ違いや幾多の困難、紆余曲折を経てきた二人には、たったそれだけでも夢のような時間だったから。
「さあ、マヤそろそろいこうか。」
「はい。」
真澄は席を立ち、身支度を済ませると、マヤのコートを手に取り彼女に着せ掛けてやる。二人が席を立つと、周囲の視線が二人に集まった。それすら心地良さげに真澄はマヤをさりげなくエスコートして店の出口に向かった。

「速水さん、東銀座まで歩かない?まだ、時間はあるでしょ。」
マヤの誘いを断る理由はない。
「いいよ。」
どれだけ世間から注目されるようになっても、マヤはマヤのままだ。コソコソ隠れるようなことはしない。それはそれで潔く心地いいから、真澄もそれに付き合う。むしろ晴れて恋人同士になった今、マヤは自分のものなんだと声をあげて世界中に叫びたい衝動すらある。
「みんな、速水さんのこと見てたね。貴方がお店に入ってきた時、女の人達が騒ついたわ。」
「そうか?俺はマヤの事しか眼中になかったからな。キミ、意外に余裕があるんだな。マヤも夢中で俺のことだけを見てるんだって思ってたのに。まあ、妬いてくれていたなら俺としては嬉しいけどな。」
マヤの可愛いヤキモチもサラッと受け止める真澄。彼女がヤキモチをやいてくれるなんて、一ヶ月前の自分には想像すらできなかった。それどころかこれまではずっと、マヤに群がる男の影に嫉妬させられるばかりだった。ふと、その頃の切なさが真澄の中に蘇る。真澄は革のグローブ外して、そっとマヤの手に触れ・・・そのまま、彼女の手を握る。マヤは思わず隣の真澄を見上げるが、真澄は前を向いたまま知らん顔をしている。恥ずかしさよりもマヤへの愛しさの方が遥かに上回っており、真澄は心の命ずるままにマヤに触れて彼女を愛おしむのだった。

歌舞伎座に着くと、マヤはロビーで御贔屓様を接待する成駒屋の夫人に挨拶をした。
「マヤさん、よくいらして下さいました。
主人も喜びますわ。後で是非、楽屋も覗いてやって下さいね。」
「今日は、御招き頂きまして、ありがとうございます。神屋町のおじ様の舞台、しっかり勉強させていただきます。」
舞台人らしい挨拶だ。真澄は堂々と振舞うマヤに満足気に寄り添う。
「まあまあ、速水社長もお越しいただけるなんて。昨年の叙勲の時には、たいそうなお祝いを頂戴しまして、本当にありがとうございました。」
「神屋町もお元気で何よりです。いつも北島を可愛がっていただいて、こちらこそ感謝しております。これからも歌舞伎界のため、お元気でいていただかないと。」
「ありがとうございます。それはそうと、速水社長もそろそろ・・・かしら?」
マヤと真澄と交互に目を合わせながら、夫人が微笑む。
「とてもお似合いですわ。」
必要最低限の言葉ながら、他人からマヤとの付き合いを認められて褒められれば、マヤの恋人になれたという実感が真澄の心をひたひたと満たす。
成駒屋夫人と別れ、パンフレットを買ったマヤに寄り添っていると、何人かのファンに声を掛けられた。
「北島マヤさん、紅天女を見てから、あなたの大ファンになりました。」
「私、マヤさんのファンなんです。」
「テレビで見るより、もっとお綺麗ですね。」
芝居好きマダム達が集まる場所だけあって、マヤの人気も凄い。マヤは誰にでも分け隔てなく、にこやかに言葉を交わして、求められれば記念撮影にも応じている。事務所的には止めたいところだが、マヤがそれを良しとせず、プライベートでのこうした対応はマヤに任せている。それに今日は、事務所社長として一緒にいるわけではない。となれば尚更、マヤの好きなようにさせてやりたいと真澄は思った。
「マヤさんの恋人さんですか?モデルさんか何かやってらっしゃるの?」
ついにはマダム達の興味は真澄にも及ぶ。マヤと違って、一般には露出が殆どない真澄の存在は彼女たちには不思議なのだろう。
「奥様方のご想像にお任せするとしましょう。」
真澄は営業用のキラースマイルで、マダム達の口撃をスマートに交わすと、これ以上は野暮と、引き際を弁えている粋なマダム達は、あっさりと別れの挨拶をしてホールに消えていった。
「さあ、俺たちも席に着こう。」
こうして、真澄とマヤは座席に着き、二人揃ってでは初めての歌舞伎鑑賞を楽しんだ。

Epilogue

楽しい時間は瞬く間に過ぎてゆき、東京の夜景
を眺めながらワインを嗜む二人。
「もうすぐ12時の鐘が鳴ってしまうな・・・」
真澄がポツリと呟く。
「・・・うん。」
マヤも淋しさを隠せない様子だった。
「恋人になったら、もう淋しくなんかないと思ってたのに。変ね・・・前よりももっと淋しいって思っちゃう。」
マヤの言葉が真澄には痛い程よくわかった。真澄も同じ思いを抱いていたからだ。
「日に日に離れていることが辛くなるみたいだ。」
真澄がマヤの手を握る。
「・・・一緒に暮らさないか?」
「えっ?」
「すぐには婚約も、結婚もできないのはわかってる。」
どんなに愛し合っていても、互いの思いだけで自由にはできない、そんな立場にいる二人だ。
「でも、少しでも長くマヤと一緒にいたいんだ。」
「速水さん・・・」
「マヤのそばにいたいんだよ・・・」
握った手に少しだけ力が入る。
「マヤは・・・マヤは違うのか?」
昼間の自信に溢れた真澄とはまた違う貌を見せる。不安に揺れる瞳は、ただの恋する男のそれだった。
「違わない・・・一緒だよ。速水さんと同じ思いだよ。」
マヤも一生懸命、その思いを伝える。
「・・・良かった。」
真澄がホッとしたように呟き、ワインをグッと飲み干す。

今日という日はもう終わってしまうけれど、それは明日という日の始まりでもある。
恋人として紡ぐ日々を一日一日大切にしたい。そして近い未来に二人が結ばれることを信じて。
12時の鐘が鳴ったとき、二人は惹かれ合うように口付けを交わした。

彼らの魔法が解けることは永遠にない・・・
〜Fin〜

SHIFT_the way you move コンタクトレンズの可能性を、未来へ。

12月18日(月)からコンタクトショップのプレオープンがおこなわれています。12月25日(月)「赤口」の正午に本格オープンしますが、リハーサルを兼ねて知り合いの方々に来てもらって、医院→ショップ、ショップ→医院の流れを確認、患者(お客)さんの色々なパターンに合わせた流れを確認しようというわけです。店員さんも全くの初心者ですから、医療のとのかかわり方を一から教えなくてはなりません。コンタクトレンズを医院で交付(販売を医療施設でおこなう時にこのように言います)は可能ですが、役所への手続書類など大変面倒な手順が必要です。 今まで「五橋レンズセンター」の会計窓口は建物4Fの一室でおこなっていましたので、不便この上なく、会計専門の事務員も居ませんでしたので今回の独立したコンタクトショップの展開は、医院にとっても「(有)五橋レンズセンター」にとってもすっきりとした形になって、建物完成30年目にしてやっと出来上った「理想型」のように思います。あとは「お客様」がいっぱい来てくれることを祈るのみです。 

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